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池の渕
荒神谷ではハス祭り。池は湖とは植生も生き物も様相を変え、ひっそりと奥まって別の魅力を見せる。
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高校生の頃、本駒込の六義園に絵を描きに出かけたことがある。水面には木々が写り込み、水中の藻が揺らめき、さざ波ですべては混然となり、何を描いたらいいのかどこからはじめたらいいのか呆然としたのだった。

その体験を2度思い出した。モネの睡蓮の前で。それから、ロココの室内で。オテル・ド・スービーズ(ボフラン:パリ)。ロココの時代はバロックをソフトにした時代と軽く扱われている向きがあるが、反転する曲線は無限に増殖し、建築から家具・織物・食器まで覆い尽くし、食い尽くし、それが鏡の中の虚の世界にまで続き、無限運動をするようかのようなめまいを感じた。円は元来た道に戻るが、反転曲線ははびこる。獰猛でさえある。優美な皮をかぶった肉食の野獣のように。
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                  両側は鏡の中の虚像(Hotel de Soubise)
水・ガラス・鏡は魔の世界。清冽にもなる、獰猛にもなりうる。

六義園に写生に行ってきたと言ったら、母が六義園は最初のデートの場所だとポロリと言った。父はポロリとも言うような人ではない。平穏にみえる夫婦の仮面の下は清冽か、獰猛か、混沌か。今は知る由もなし。泉下の人となって久しく。(礼)




by trmt-ken | 2019-07-06 20:00 | 折々に・・・ | Comments(0)
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