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初期中世・ロマネスクへの旅-(2)

プレ・ロマネスクの小さな教会


■プレ・マネスクの教会

プレ・ロマネスク様式の教会としては、スペイン北部のオビエドやレオンなどの都市に残るものが知られている。これらの都市はアストゥリアス王国 (718915)やレオン王国(9101109)の首都であった。






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イスラムに征服されなかったことから、オビエドとその周辺には西ゴート帝国の様式を受け継いだ810世紀の建築物が残っている。アストゥリアス王国時代の教会は、プレロマネスク様式と呼ばれ、後にヨーロッパ聖堂建築の一時代を築くロマネスク様式の先駆けとなったもの。1985年に世界遺産の登録を受け、1998年には対象範囲が拡大され、「オビエドとアストゥリアス王国の建築物」として拡大登録された。  (オビエド 世界遺産プレ・ロマネスクの教会」より)

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サン・フリアン・デ・ロス・プラードス教会(9世紀頃) サンミゲル・デ・リーリョ教会(842年) サンタ・マリア・デル・ナランコ教会(848年)


サン・ペドロ・デ・ラ・ナーベ聖堂

7世紀末建設されたスペイン・カスティーリャ・イ・レオン州サモラ県の村に建つ小さな教会。
西構えの外部に装飾はなく石垣の箱ようにも見える。平面プランはギリシャ十字型。のちのロマネスク様式の内陣は半円形だが四角とそっけない。

内部の天井は筒型ヴォールトに覆われており、アーチは馬蹄形アーチを採用している。この馬蹄形アーチがこの教会で唯一装飾性を帯びており、とても効果的と思う。窓は少なく小さい。暗い室内の光の印象深さが想像される。

最も大きな特徴は住宅の様に親密なスケール感。

主身廊の幅は約4m、交差部は8畳の広さしかない。ロマネスクやゴシックの大聖堂の第一印象は「ウワーッ、すごい!」に尽きるが、小さな教会には「ナントッ・・・もっと近寄ってみたい!」という感慨が湧く。


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ブッキラボーな外観   主身廊と馬蹄形アーチ  小窓の馬蹄形アーチ
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8帖広さの交差部を照らす窓明かり  ギリシャ十字型の平面



小さな教会と小住宅

ピレネー山脈の麓バル・デ・ボイの高台にあるサント・キルクの庵はロマネスク時代の小さな教会。主身廊・内陣と塔のみで構成される素朴な佇まいは、ピレネー山脈を背景とし秀逸。

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ピレネー山脈を背景のサント・キルクの庵


スペインだけでなくヨーロッパの各地に数多くみられるプレ・ロマネスクやロマネスクの小さな教会にひきつけられるのはどういう理由からだろうか・・・と考える。

石の壁や瓦屋根、石敷きなど自然素材による丁寧な手仕事・・・という一般的なことと共に

○ 装飾が少なく素朴で本質的

○ 必要最小限という潔さ・・・プリミティブ

○ 窓が少なく小さいことによる光の構成

○ 小さいなかにも高さがあり、垂直性を感じるプロポーション

などが挙げられるのではないか。

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フランスの小さな教会

このような特徴は、モダニズム建築の吉阪隆正や鈴木恂のコンクリート打放し住宅と共通する。
○ 装飾が少なく素朴で本質的
○ 必要最小限という潔さ・・・プリミティブ
○ 窓が少なく小さいことによる光の構成
○ 
小さいなかにも高さがあり、垂直性を感じるプロポーション

と反芻し、

フランスの小さな教会


組積造はコンクリート造建築の原点・・・と改めて見入っています

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ヴィラ・クウクウ(吉阪隆正)  彫刻家のアトリエ(鈴木恂)

「装飾が少なく素朴で本質的・必要最小限という潔さ、プリミティブ」などの特徴については、木造の小さな古民家とも共通するものがあります。(和)

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真鍋家(愛媛県17世紀)







by trmt-ken | 2019-06-03 10:47 | 建築 | Comments(0)
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