文字に刻む音-蘇東坡によせて-
蘇東坡の詩は、重なる音の響きが心に残る。

鼓闐闐(てんてん)にはじまり、水潺潺(せんせん)に終わる詩。どちらも擬声語。旃、遠、邊、見、川、煙と脚韻を踏む旅立ちの歌。
如走馬で始まり如飛鳥で終わる詩。繚繞(りょうじょう:まつわりめぐること)、縹緲(ひょうびょう:遠方にかすかに見えるさま)畳韻を踏み長江の船旅をうたう。底を流れる杜甫の調べ。糸偏にからまるように。
滾滾(こんこん:湧き返って流れるさま)としてとうたう時、ここでも遠く杜甫を響かせる。

別の発見もある。蝌蚪(かと:オタマジャクシ)、耆耇(きこう:たのもしい老臣)、鼓鼙(こへい:馬上で打つ太鼓)と部分を同じくする文字が続く。これはとても偶然とは思えない。(検索しても出てこない漢字もあった)

繰り返しの音はあたかも鼓動のようで。そして、ふと振り返れば、季節を大事にする日本の歌は、四季の巡りをほとんど祈りのように唱えたのではないか。同じようにうたった歌人と唱和しているのではないか。昔、学校で詩歌を習う時、季語とか枕詞は意味がないように扱われてきたが、そんなことはないと思う。言葉の重なりや遊びにこそ、託すことのできる思いもある。言葉を数珠のように手繰りながら。
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蘇東坡:黄州寒食二首:中央公論社書道芸術より:
長江が増水して戸口から流れ込んで来そうなことを記すあたり。

「東坡」という号自身、 白居易の詩から採ったもの。王義之・顔真卿が文字の血肉となり、また敬愛する先人の調べを糧として。
(礼)

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by trmt-ken | 2017-11-21 21:54 | 読書日記 | Comments(0)
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