現代建築の現在-(6) 土な建築・土なモダニズム

これまで本稿では、地方都市における現代建築の乱暴な立ち居振る舞い、建築や風景を判断する基本原理などについて考察を行なってきました。

  • 第1回美しい街は可能か……街並みの不調和
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    昭和30年代の石州瓦集落(島根県)
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  • 第2回懐かしい建築・新しい建築……変わらないものへの視線
  • 第3回空間の居心地・ここちよい景観……空間や景観の判断原理
  • 第5回新体育館は現代的デザインがふさわしい……似非城下町景観
地方都市の不十分なモダニズム建築について述べながらも、「きわめて特殊な一握りの現代建築しか評価に値しないということは、近年の現代建築総体の劣化ということではないか…」と考えていました。第4回「漂うモダニズムを読みました」では、新建築に掲載された槇さんのモダニズム建築に関する論考を読み、読後感を記しました。この論考は、建築と言語を対比して論じ、英語や現代建築が世界性を獲得する過程で劣化し衰退現象が現れている…という視点を基調に、様々な考察が「漂うように」展開されています。奥の深い難しい論考ですので、次回以降に体勢を整えて、少しでも踏み込んでみたいと考えています。
今回は、建築について主観に偏った論…「私はこんなのが好き・あんなのが嫌い…こんな建築をめざしたい…」について述べてみたいと思います。あれはダメ、これもイカン…というならば、どんなのが良いというのかを示せ…」という声に、「言語によって」迫ってみようと思います。

■土な建築
土なの「」は、きれいな・変なの「」である。土に近しいとか土着性とかの意味を含む造語であり、土の建築のみをさしているわけではない。

  • 地面に近い場所……背が低い建物、地面に近い場所が良い。地震や火事の時逃げやすいことが大切であり、飛び降りられる高さでないと落ち着かない。
    高層建築は苦手で3階建てが限度。
  • 土の表情・姿……崩れかかった土塀は美しい。土手やあぜ道など土のランドスケープは好ましい。
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    (左)あぜ道 (右)萩の土塀
  • li>地域性……地域性に根差し、その場所にずっと昔からあったような佇まい。気候や風土などその地域でなければならない理由とか必然性を備えた建築。インターナショナル(世界共通性)というよりローカリティ(地域固有性)に着目した建築。
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  • 場所性……土地の起伏や道路の折れ曲がり、見晴らし、風向き、隣や向いとの兼ね合い、街の中での位置などを大切に、その場所でなければならない理由とか必然性を備えた建築。若い友人の一人が「根っこ建築とキノコ建築」ということを言っていた。「容易に移植可能な、根っこのないキノコ建築」ではなく「その場所でなければ成立しない根っこの強い建築」との意である。
  • 無名性……アノニマスな建築。作為性や技巧性を極力排除し、素人性や泥臭さを大切にした建築。きわだつ建築や独創的な建築を目指すのではなく、生活環境に必要最小限の利便性と機能性を追求する。建築や都市空間の主役は「建築家の自己表現」などではなく、そこで営まれる生活である。
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    (左)コンクリートの空間(ひびきあうもの展中庭)
    (右)コンクリートの空間(ひびきあうもの展内部)
  • 自然系素材……石、土、木、紙、コンクリート、水、焼き物、植物、鉄などの自然系の素材を基本とし、石油化学製品などの工業製品は慎しむ。
  • ヤワラカイ建築……ヒトの感情をはね返さずに素直に受けとめる「やわらかさ・許容性」と、輪郭や境界が緩やかで曖昧であるという「やわらかさ・曖昧性」。
  • あいまいな輪郭…内部空間と外部空間の境界は曖昧なのが良い。外のような内部空間や内部のような外部空間は居心地が良い。内外の境界が建築の輪郭を造るので結果的に曖昧な輪郭の建築となる。
  • 陰影や凸凹……多い方が良い。庇は雨量が多い亜熱帯モンスーン気候地域では不可欠。隙間は魅力的な空間。
  • 透過性……ヒトや空気の出入りを遮断しないのがよい。風通しは大切。ガラスは空気の透過しない壁であり多用は禁物。
  • 身体性……ゆっくりしたスピードによる手仕事に支えられた技術が好ましいが、これ見よがしの表現はまずい。機械力への依存はなるべく控えたい。
  • 肌ざわり……ざらざら、ゴツゴツした表面。へこんだり欠けたりするのもよい。
  • 弛緩性……その中にいても外から眺めていても緊張しない、リラックスした空間。

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    コンクリートブロックの空間(高橋邸)

■モダニズム建築と土な建築
本稿の第一回、「現代建築の現在 -(1)美しい街は可能か」では、モダニズム建築について以下のように記述しましたが、このようなモダニズム建築と「土な建築」との関係性についての考察が必要になってきました。

モダニズム建築
産業革命によって、他の技術と同様に建築技術も飛躍的に進歩しました。

  • 石造や木造にかわり、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の普及
  • ガラスなどの新しい建材、電気や空調など新しい設備の利用などにより、装飾の少ない「現代建築」(モダニズム建築)のスタイルが出来上がりました。
このスタイルは「インターナショナルスタイル」と呼ばれ、国際様式・世界共通様式という意味をもっています。当初はさっそうとした若々しさ・爽やかさ・初々しさ等の気分で迎え入れられたのですが、その後陳腐化し、単なるのっぺりした四角い箱という様相を深めたため、モダニズムに対する反省の動きが出始めました。(これをポストモダニズムといいます)モダニズム建築が置き忘れてきたかのように見える歴史性や地域性を再評価しようとするものでしたが、その多くは「新しい装飾主義」とでも呼ぶべきものになっているようです。
  • モダニズム建築の発生
  • 世界や日本における展開
  • 私たちの住んでいる地域とモダニズム建築
などについて思案するうちに、「土なモダニズム」という概念が浮上してきました。次回は、「土なモダニズム」というコンセプトを手がかりに現代建築を眺め、槇さんの「漂うモダニズム」の考察にも踏み込んでみたいと思います。

[1]エーゲ海の村と街(A.D.A.EDITA)
[2]ルイス・バラガンの建築(TOTO出版)


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by trmt-ken | 2013-11-05 12:30 | 現代建築の現在 | Comments(0)
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