DOOR BOOKSTOREをめぐって
1月9日(土)の夜、DOOR BOOKSTOREを主宰する高橋香苗さん達とともに、「DOOR(高橋邸)の空間と活動」を語る会がひらかれました。DOORは、住宅地の分かりにくい場所にあるもかかわらず、人を惹き付け、「本屋さん」をはるかに超えた特別な場所となってきました。
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以下の文章は、1996年竣工当時の建築雑誌の記事です。
東に眺望の開けた高台に建つ,アトリエつき2世帯住宅である.松江市の南,起伏のある住宅地の一角を造成した土地で,東面の隣地との高低差は9mにもなる.そのほかの面は3方とも住宅が立ち並んでいる.
長らく寺の住職をしてきた両親が引退して同居することになった.建主は金属彫刻家で,アトリエは工房であり,また昔の作品やヒントになるような宝物をしまい込んでもある特別なプライベートな空間である.ときどきは中庭に出て,屋外でも制作してみたいといわれる.婦人は,家を拠点に独自の芸術的活動を続けており来客も多い.こうした,個性の強い家族の各構成員がそれぞれの世界を保ちながら生活できる空間をつくることが最大の課題であった.
両親と家族の生活ゾーンを見晴らしのよい東向きに置き,接客空間,アトリエを中庭を囲むように配置している.金属の下降音を遮断するため西面は閉じておりガラスブロックが唯一表情をつくっている.中庭には円形に切り取られたひさしが架けられていて,中央の大きな欅と共に生活の中心となっている.この家には行き止まりがない.寝室-1の奥の納戸を通ると中庭に抜け,書斎からはアトリエのブリッジを渡ってテラスに出る.テラスと中庭を螺旋階段が結び,全体でメビウスの輪のようになる.
金属彫刻は小品であっても不思議な力を発して周りの空間を支配する.こうした作品の背景として,また日々の生活そのものが「道」である生活の器として,コンクリートブロックの素朴さに着目した.外壁は二重壁で隙間に木製建具が引き込まれる.両親の部屋のみプラスター仕上げとした.コンクリートブロック二重壁のつくりは自邸に次いで2軒目であるが,断熱性がよく,湿度の高い山陰の冬にも結露が起こらない.コンクリートブロックの壁,足場板の床は内部外部共に使用している.内外の関係を意識的に近づけるのがこのところのテーマになっている.
2年が経ち,中庭の欅も元気に育ち東の擁壁肩に植えたヘデラが伸びてきた.寺から引越してきた古い壷,手製の屏風,夫人好みの器や家具などが微妙に近郊を保っている.
(有光礼子・寺本和雄)
新建築住宅特集1996年11月号より

現在のお店は当初、正訓さん(金属彫刻家)のアトリエとしてつくられました。その後、香苗さんの陶芸アトリエ、また若い芸術家のためのギャラリーなど少しずつ変貌して今から5年前DOORがオープンしました。空間自体が、人の輪とともに育っているようです。


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by trmt-ken | 2010-01-10 23:20 | 建築 | Comments(0)
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